「なんとなくいやらしい仕草だよね、それ」
弟が急に兄を見つめて言うものだから、エドワードは眉をしかめた。
「何がだよ」
ただ、自分は午後のお茶を楽しんでいただけなのに。
「ほら、それ」
アルフォンスは、そんな兄の指先を示した。そこには今、口に放り込んだばかりの、黄金色に焼けたアップルパイのかけらがいくつかと、うまく食べられなかった林檎のソースが、蜜のようについている。
「兄さん、本当に美味しそうに指を舐めてたね」
「んなの……」
もったいねぇだろが、と、未だに指を舐め続けながら言ってやろうとしたとき、アルフォンスは静かにこう言った。
「昨日、僕のもそうやって、美味しそうに舐めてたよ」
思わずエドワードは、口に残っていたものを吹き出しそうになった。
叶さん
「てめ、涼しい顔してなななななに」
「思い出したもんだから」
「俺にまで思い出させるな!」
「あんなに積極的に舐めてくれたのに?」
エドワードは耳まで真っ赤になった。
「お、おまえ、が……」
「僕がなに?」
「おまえ、が…き、気持ち…」
尻すぼみになって、俯く。
「おまえ、を……気持ちよく、させたかったから、が、頑張ったんだろ」
「……ふうん」
つーか、アルが感じて息を乱すのが嬉しくて一生懸命頑張ったのに、なんだその醒めた態度。
エドワードは顔を上げ、可愛く顔を真っ赤にさせながらアルフォンスを睨みつけた。
「もう二度としねえ!」
「別にしてくれなくても兄さんが乱れてくれるだけで僕は感じるからいいけど。それよりお返しと言ってはなんだけど、僕も舐めてもいい?」
「えっ」
変な事をされるんじゃないかと、慌てて空いているほうの手でベルトとジッパーを掴んでブロックする。
「なに勘違いしてるの。さすがに今はしないよ、そんなこと」
そう言って手を伸ばし、さっきまでエドワードが舐めていた手を掴んだ。ほっとしつつ、でも指を舐められんのか? と抵抗を感じてその手を引っ込めようとしたら、ぐい、と更に強い力で引き寄せられた。
アルフォンスは兄の顎を掴むと上を向かせ、口の周りをべろりと舐めた。
「口の周りにもアップルパイがついてる」
猫みたいに唇を何度も丹念に舐められ、恥ずかしいし腹立たしいのにぞくりと官能を感じてしまって躰が震え、エドワードはぎゅっと耐えるように目を閉じた。
直
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