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目覚めたときから、限界だった。



よく晴れた休日。掃除も洗濯も終わり、開け放した窓からやわらかな風が、カ
ーテンを揺らしていた。読みかけの本を持ってソファに座ったものの、ものの
数分で寝入ってしまったらしい。
ようやく涼しくなってきたので、体の底の方に澱のようにたまっていた疲れが
出てきたものか。今年の夏は暑かった。
すとんと、夢も見ない心地よい眠り、だった。途中までは。
急にとてつもない乾きが襲ってきたのだ。
これはあれだ。兄がいたずらしている。

自分の体をとりもどしてから、時折、焦げ付くような飢えを感じるようになった

心の一部を扉の向こうにおいてきでもしたのか。まるであの真っ白い虚無とこ
の体がつながってでもいるように、おそろしいほどの、虚、が、からだのなか
に巣くっているようだった。
もうこの体は鎧ではないのに。空洞などないはずなのに。

こわかった。

不思議なことにその飢えは、兄といると治まった。傍若無人なその一挙手一投
足が、ぴたりぴたりと虚ろを満たすのだ。
だから、このことは誰にも言ってない。知られてないはずだ。
兄と一緒にいさえすれば、正常でいられるのだから。

なのに。飢えを激しくするのもまた、兄だった。



たまらずに目を覚まし、案の定目の前にいる兄に噛みつくようにキスをして、
体の下に引き込む。なんだとかどうしたとか喚くのもかまわず、欲しいんだと
視線で黙らせる。言葉をつくる余裕もない。
だんだん兄もその気になったのはいいものの、今度は、耳の横で転がる笑い声
も指先の感触も、吐息も。そのすべてが僕を煽った。
とろけそうなほど甘い声で名前を呼ばれ、目の後ろで火花が散った。

欲しい欲しい欲しい欲しい
兄から僕に、流れ込んでくる何かを感じる。そうだ、これが欲しい。
首の後ろ。今はもうない、血印のあった場所が燃えるように熱くなった。
でも足りない。
もっともっともっともっと、

ぽたりと汗が落ちて、兄の涙に溶けた。
ああ、泣いて、る
優しくしたいのに。
壊れねーよ、と兄は笑うし、その通りなのも知っているけど。
普段手あらくぶん投げたりも、もちろんするけど。でも大事にしたいのに。
兄の指が頬をなぞり、目元を舐められて気づいた。汗じゃない、涙だ。
自分も泣いている。
笑いながら顔中をついばまれて、今度はちゃんと自覚しつつ涙が出た。

キスをする。
ふれるだけの。
うつろが、満ちる。
兄で 満ちる。





alphonse ver.



オイラも泣いちゃう

そしてほのぼの「おまけ」↓






事後は、兄は歯形&痣いっぱい、弟は爪痕いっぱい。
「あああ、背中に傷がー!傷のあるところからいたみやすくなるんだよな?」
「なんの話」
「まあでも、そもそも自給自足用の家庭菜園で、どこにも出荷なんかしないか
らいいんだけどさー」
「だからなんの話!?」






幸せすぎてニヤニヤが止まらないんだぜ

鳥子さん、ありがとうございました。強請ってごめん(笑)





























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