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ぱしゃん。
それはいつも液体に似ている。

思考は、脳内の細胞の電気信号と化学物質の分泌量の変化に過ぎないのに。
いとしいというこの気持ちは、確かに脳内で生まれたものなのに。
なのに実際には、胸が熱くなる。
胸を熱くし、液体のようにあふれ、こうして抱き合ってキスを交わしているだ
けで、もうびっしょり濡れてしまった。

ぱしゃん、ぱしゃん、
音が聞こえそうなほどだ。

弟のシャツのボタンをはずし、素肌に手を滑らせて、邪魔なシャツを脱がす。
あ、こいつちょっと体毛濃くなった?
紆余曲折の末に取り戻した弟の体が、もりもり第二次性徴を示していること
に、むふむふと満足感がわいた。なんというかこう、手塩にかけた野菜が実っ
ていくのを見るような。
うん、腕の筋肉も順調。
上腕二頭筋の線をなぞり、やわやわと噛んでみる。
思わず、くすくすと笑いがもれた。

どうだ、俺の弟は、どこの市場に出しても申し分ないばかりか、収穫祭のコン
クールでも金賞を取れるくらいよく育っている。

そういえば、さっきもソファで眠っている弟を見つけて、おーよく育ってるな
ーと思うと同時に、目の前の、おひさまを浴びながら畑に転がってる野菜のよ
うな、その自慢の作物の出来を確認したくなったのだった。顔とか体や足をさ
わりまくり、首筋を舐めたりしていたら、
目を覚ました野菜は、同時に獣になった。
しかも発情期の。

余裕のない弟は好きだ。
好きなのだが、起きてから一言も発さずにただひたすら追い上げられて、ちょ
っと苦しい。
首筋にむしゃぶりついて甘噛みしている弟に、お前まあちょっと落ち着けとい
うように首の後ろをなでてやり、少し顔を上げた弟の顎にキスをした。
「は、ぁ、あ、アル、」
兄ちゃんちょっときつい、とその耳元にささやこうとしたら、弟は喉の奥でう
なり声のような音を立てて、今度は本気で噛みついてきた。
痛くはない。でも熱い。
ちゃぷちゃぷと胸からあふれ出る熱い流れは勢いを増し、息ができなくなった。
溺れる。

熱い熱い熱い熱い、
流されそうになって弟にしがみつく。
いっそもろともに沈もうと、腰を動かす。
弟が好きな角度に。
水の中、にじんだ視界で、それでも必死に視線を合わせる。
俺の、弟。

泣きそうなほど必死になると、どんなに無表情を装おうとしても、弟の目の縁
は赤くなり、まぶたに薄く青い血管が浮き出た。昔から、子供の頃からそうだ
った。その顔が見たくて、からかったことも何度もある。泣く寸前。この顔の
時にからかうのをやめないと、次の瞬間には本当に泣き出すのだ。
でも、今はもっと。
もっと、必死になれ、もっと。
欲しがれ。


どどう、どどうと息もつかせぬ激流が、この身を押し流す

ああ、また、

あふ、れる





edward ver.






































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