『アルぅなにみてるんだ?』
うんと背を伸ばしエドねこちゃんは、アルねこちゃんに訊いた。
『にいちゃ、あれ。まんまるきらきらの』
『まんまるきらきら?』
不思議そうに小首を傾げると、アルねこちゃんと同じように目の前の物体を見ました。
それは、昨日なーちゃんが、押入れというところから引っ張り出してきたものたちです。
木の形を模した緑の存在。それを彩るかのように色彩鮮やかなオーナメント。ふわふわの綿毛帽子のような雪というもの。
びらびらとしたへんな長いもの。
とりわけアルねこちゃんとエドねこちゃんが魅入っているのは、きらきらのまあるいもの。
飾りつけの最中にさんざんそれで遊んでいたのだが(邪魔をしていたともいう)、全部必要だからと言って、なーちゃんは兄弟が届かない位置へと飾りつけたのでありました。
そもそも、いつものなーちゃんなら兄弟にこころゆくまで遊ばせてくれるのに、昨日のこの目の前の飾りにはほとんど触れさせてはくれませんでした。
『にいちゃ、さわりたい』
『うん、あそびたい』
そわそわ、どきどきしながらも兄弟は、一歩づつ近づいていきます。
前足を、木の形を模した置き台の部分にのせた瞬間、部屋の扉が開きました。
『『なー』』
『『なー』』
と、ハモリながら兄弟はなーちゃんのことを呼びます。
「あーはいはい、わかったからもうちょっとだけ辛抱してね」
そう言ってなーちゃんは、兄弟を置物からそっと離したのでありました。
腕の中で、鳴き続ける兄弟をなーちゃんは、寝るときに使っている兄弟お気に入りの籠の中へと下ろしました。そして――
がさごそと、紙袋から取り出したのは、小さな小さな鈴の付いた首輪が二つ、兄弟の前に置きました。
赤と緑の色違いの首輪、お揃いなのは金の鈴。ちりりんと鳴るそれは、とってもとっても軽やかな音を奏でます。
「ちょっと早いけどクリスマスプレゼントだよ」
『なー?』
『くりすます?』
エドねこちゃんとアルねこちゃんが選べるように並べられた首輪と、それを差し出したなーちゃんを、兄弟は交互に見比べます。
きらきら、きらきら、ちりりん‥となる首輪という物、まったく初めて見る物体なのですから。
「アルはどっちがいいかな? エドはどっちがいい?」
と、訊かれても、エドねこちゃんとアルねこちゃんは、互いに見合わせるばかりで、びっくりしています。でも、
『なー』
と鳴いて、先に動いたのはお兄ちゃんでもあるエドねこちゃんでした。
ちょんっと赤い首輪の鈴を鳴らしました。
ちょんと触れれば、ちりりんと鳴いて鈴はゆれます。
『なー、なー』
と鳴いてアルねこちゃんが緑の首輪の鈴を鳴らします。アルねこちゃんの仕草は、エドねこちゃんにそっくりです。
「エドは、赤で。アルは緑でいいのね?」
呼応するようにエドねこちゃんとアルねこちゃんは、なーちゃんのことを呼びます。
なーちゃんが、赤の首輪をエドねこちゃんに。緑の首輪をアルねこちゃんに順番に付けていきます。
首輪を付けられている最中、エドねこちゃんとアルねこちゃんはずっとずっとおとなしくしていました。
そのあと、別の部屋に行ったなーちゃんを見送ってエドねこちゃんとアルねこちゃんは、ベッドからストンと降りたのでした。
ちりりんと鳴く金色の鈴、色違いの首輪。
兄弟初めてのプレゼント。
そして何より惹かれるのが、目の前の木を模した“クリスマスツリー”なのです。
一緒にちょこんと並んで見上げるツリーは、さっきまでとは随分と違う雰囲気を兄弟に与えました。
『にいちゃ、ちりりんてなるのいいなぁ』
『アルぅのもちりりんてないてるよ』
くすくすとアルねこちゃんとエドねこちゃんは笑いあって、きらきらまあるいオーナメントを大人しく見上げていました。
おしまい。。
クリスマスプレゼント
|