「兄さんが痴漢に胸をもみもみされる話」
――僕のものだ。
陽気な声も、柔らかな金色の髪も、右と左の温度が違う指先も、
滑らかな肌も――あの熱い心も体も。
すべてはこの腕の中にある……はず。
※コピ本
クリックで拡大 24p 200円
表紙/あーく
文/直
A5
「チカン?」 眼の細いファルマン少尉が、コーヒーカップを片手に眉を寄せ、怪訝そうに聞き返してくる。 「おうよ」 猫舌のエドワードは、カップの中のコーヒーの表面を、ふーふーと吹きながら答えた。 「気のせいとかじゃないの?」 フュリー准尉が指先で自分のメガネを直しながら聞いてくる。 「最初は気のせいかと思ったけどさ、鷲掴みにしないだろ、普通」 「うーん、そうだねえ」 「で、相手は女か? 男か?」 ブレダ中尉が真面目くさった顔で言った。 「誰かも分かんねえのに、性別までは更に分かんねえよ」 「尻を鷲掴みにした手の大きさとかあるだろう」 「手の大きさかー。どうだったかな?」 どれ俺が試してやろう、と咥えタバコのハボック中尉がエドワードを立ち上がらせ、尻を掴んできた。 「痛って! 揉むなよ中尉!」 「おまえ小尻だなー。尻だけはガキの頃のまんまか?」 「うっせ」 「で、どうだ、男っぽいか?」 「え? う、うーん…?」 アルフォンスにバレるのはまずい。以前、スキンシップ過多の同僚に肩を抱かれていたところを弟に見られ、「気安く体を触らせるな」「なんでだよ、ただじゃれてただけだろ」といった具合に喧嘩になったのだ。 アルフォンスは怒ると怖い。静かに、とにかく静かに怒るのだ。マスタングですらアルフォンスを怒らせるを嫌がる。特に何かするわけでもないのに、その静かさっぷりが心臓に悪い。 |