兄にゃんが最近、あんまり舐めてくれない。
舐めすぎて、アルにゃの背中にハゲを作ったからだ。
ボクはハゲなんか気にしないのに。それよりも兄にゃに舐められなくなったことの方が気になるのに。
もっとペロペロしたいし、ペロペロされたい。
もっともっとしたい。
アルにゃは家の中を歩いて、兄にゃんを探す。
兄にゃは日の当たる窓辺で香箱座りをして硝子の向こう側の景色を眺めていた。
緑の葉が、風に撫でられてそよそよと揺れている。その葉がひらめくさまを、じっと見ている。
アルにゃは兄にゃんの側に行くと自分も座って、耳元を兄にゃにこすり付けてマーキングする。
兄にゃはボクの、と何度も何度もこすり付ける。
「アルにゃ? どうしたにゃ」
「どうもしないにゃ。ねえ、兄にゃ、舐めてもいい?」
「うん」
お許しが出たので、アルにゃは遠慮なく舐める。
口元を舐めて、目元を舐めて、ぴんっと立っている耳を舐める。気持ち良さそうに目を閉じる兄にゃを見て、もっともっと舐める。
兄にゃのしっぽが、うずうずと動き出した。ぱたぱたとしっぽの先を振って、目を開ける。
「兄にゃもアルにゃを舐めたいにゃ」
立ち上がった兄にゃは、アルにゃを舐め始めた。口元を舐めて、目元を舐めて、ぴんっと立っている耳を舐める。
くすぐったくて顔を逸らしたアルにゃの首筋も、ペロペロ舐めた。
「ボクだってもっと舐めたいにゃ!」
負けじとアルにゃも兄にゃを舐める。ペロペロ舐める。とにかく舐める。今まで舐めるのを我慢してた分、いっぱい舐める。
これでもかというほど舐め合うので、お互い目を開けていられない。それでも舐め続けた。
お互いの舌が当たって、ざりっとした。
「いい加減にしないかバカ猫ども! 見てるこっちが恥ずかしいわ!」
乱入してきた飼い主母さんに、右と左に分けられる。
「アルにゃっ」
「兄にゃーっ」
あんたたちはどうして程度というものを知らないの、と怒る母さん。
兄にゃとアルにゃはそんな声には耳をふさいで、手足をじたばたさせて抵抗した。
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