洗濯物を入れたカゴを抱えて、飼い主母さんが階段を上る。
その後ろを、エドにゃがトコトコついてゆく。
二階に着くとガラス窓を開け、ベランダに出る。当然その後を追って、エドにゃもベランダへ出た。
エドにゃはベランダの手すりの上を歩くのが好きだ。危ないにゃ、とアルにゃによく言われるけど、なんとなく危ないことをしたい時があるのだ、男には。
ぴょんと器用に飛び乗って、10cmもない幅の丸い手すりを伝って歩く。
風が、ぴゅう、と吹く。
風なんかに負けないにゃ、と兄にゃは突風をフンと笑った。バランス感覚には自信があるのだ、そう簡単には崩されない。
また風が吹く。
しかしエドにゃは崩れない。
勝った、と思ったときだった。
「あ」
飼い主母さんが物干し竿をドコかにぶつけ、エドにゃの背後でガタリといわせる。
びっくりして飛び上がったエドにゃは、そのまま足を滑らせて二階から落っこちた。
ちょうど軒下で外を眺めていたアルにゃは、空から兄にゃが突然降ってきて飛び上がった。
下の地面は柔らかい土だし、取りあえず猫なので、なんとか無事に着地したエドにゃだったが、びっくりしたのとカッコ悪さから、走って庭の植え込みの影に隠れた。
エド、と大きな声を出しながら階段をバタバタと下りて来る飼い主母さんの足音が聞こえた。
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