伝われ |
被害を訴えた女性はこちらを見上げ、腕を掴んでいた手に力を入れる。 「なんでこんなこと、するんですか」 周囲の目が一斉に集まる。非難と同情が混じった視線の中で、アルフォンスは唖然としたまま開いた口が塞がらなかった。
駅構内の憲兵詰所に身元引き受けに来た兄は、拘束されている弟を見て楽しそうにニヤニヤと笑った。 「………嬉しそうだね」 「おおよ」 「人事だと思って」 「だぁってオレがアルに迎えに来てもらうことはあっても、オレがアルを迎に行くっことって、ねえもん。正直に吐け、とか言われなかったか?」 「言われるか」
「大丈夫だろ? そもそも言い掛かりなんだしよ。軍に掛かってきた電話だって、『痴漢に間違われたんですが、一応そのまま身柄を拘束してますので』って内容だったし。ハボック少尉とブレダ少尉なんか、腹抱えて笑ってたぜ?」 「……みんな、本当に人事だと思って」 ますます機嫌が悪くなる。エドワードは苦笑して弟の頭をぽんぽんと叩いた。 見栄えがいいと周囲の視線を集めるから、こういうときに得だ。
「おや。最年少国家錬金術師と同じ名前なんですね」 人の良さそうな笑みを浮かべる青年に、本人だよ、と言うと青年はええ!? と大業に驚いた。 「エ、エルリック少佐でありましたか」 「いや、敬礼とかいいから。それよりさ、被害者だっつー女性に会わせてくんない? ちょっと話してみたくて」 青年に案内された別室のソファに、ハンカチを片手に握り締めた女性が座っていた。歳は20くらいだろうか? こちらを振り向くのに合わせ、肩まである茶色い髪が揺れる。緑の目と真っ赤な口紅が印象強かった。
「オレの顔に何かついてた?」 「い、いえ。あの、一瞬、女の方かと思ったので。……弟さんと似てないんですね」 「…………」 それは暗に、爽やか好青年の弟とは違って、オレは女みたいな筋肉ナシの痩せっころで、弱々しくて、男らしくなくて、背がちっさいって言ってるのか? と突っ込みたかったが、じっと耐え、ゴホンと一つ咳払いをした。 「アルがあんたに痴漢行為をしたって言うけど、本当? 勘違いじゃなく?」 「だって、金色の髪が見えました」 「そりゃ後ろに立ってたんだから、振り向けば見えるだろ?」 「後ろから体を触られたんです」 「でもアルは両手が塞がってたんだ。近くに居た何人もの人がそう証言してくれてる。しかもあんたと背中合わせだったって」 「私が嘘を言ったっていうんですか?」 「そうじゃなく、勘違いじゃないかと……」 「ひどいわ、みんなで。何度も痴漢に遭って列車に乗るのが怖いのに。勇気を出してやっと犯人を捕まえたと思ったのに」
い、いや、責めてるんじゃなくて、とエドワードは慌てて宥めようとしたが、なんと言っていいか分からず、不用意に触っていいかも分からず、手をうろうろさせるしかない。
女性は鼻をすすり、小さく頷く。取りあえず泣くのをやめてくれたので、ほっとした。 「何度も遭うって、同じ奴?」 たぶん、とか弱い声で頷き、いつも後ろから触られるからよく分からないけど、と女性は言った。 「周囲に助けを求めるとかはしたことねえの?」 「できません、そんな。怖いし、恥ずかしいし。今回だって、すごく勇気がいったのに……」 また目がじわりと濡れる。おわっ、泣くな、と慌てて押し止め、女性の名前と住所を聞いた。女性はリズ、と答えた。 「痴漢に遭うのは朝の通勤列車だけ?」 女性は頷く。帰るときの車内は朝と違って利用客が区々だから、朝ほど混み合うこともなく、そのせいで痴漢が出ないのかもしれない、と言った。 「明日から、オレ、あんたを毎朝迎えに行くよ。列車に乗るのが怖くなくなるように」 え? と女性は目を見開く。 「これも何かの縁だし。その不貞痴漢ヤロー、捕まえてみせる」 「あ、あの」 「何も心配しないでいいよ。まかせろって。な?」 「そ、そんな。そんなこと、してもらう謂れは……」 「謂れはあるよ。あんたや世の中の為だし、なにより弟の為だし。ホントの犯人捕まえて、アルの潔白を証明したいんだ。あんたは何も心配しないでオレに守られていればいいから。絶対守ってみせるから」 力強く言って、安心させるように優しく笑う。 女性は唖然としてエドワードを見つめ、ほんのり頬を染めて俯いた。 朝、出勤の用意をしながらエドワードは自分の髪を結ってくれている弟に聞いた。 「まさか。いくら無実が認められても、もう汽車には乗れないよ。今日からバスで出勤する」 汽車の方が時間が正確で安かったのに、とアルフォンスはブツブツ文句を言う。 「まだ怒ってんのか?」 「あたりまえ」
「お。さんきゅ。 「え? もう?」 「ん、ちょっと行く前に寄る所があって」 「……ふうん」 聡い弟になんだか見透かされそうな気がして、エドワードは慌てて家を出た。
いつも通う道を行って、いつもの改札から入り、いつもの列に並んでいつもの車両に乗る。 「場所もいつも同じ?」 彼女は頷く。 『いつもの場所』だという車内のドアから少し離れた所で、座席側の手すりに掴まる。 「あ、あの、エドワードさん。そんなに頑張らなくても私平気ですから」 「でも、体潰れちゃうぜ? 女の子なのに」 「大丈夫ですよ。毎日乗ってるんですから」 あ、そうか、ご苦労さんだなぁ、と屈託なく感心するエドワードに、彼女はくすくすと笑った。 考えてみればそれも当然で、彼女のことをいつもエドワードが庇っているのだから、犯人は手を出せない。かといって、彼女に犯人を釣るための囮になってもらうことはどうしても出来なくて、そうなるとアルフォンスの容疑を晴らせない。 これだけはやりたくなかったが、とエドワードは奥の手使うことにした。
なによりも盛り上がるのは、軍が開くレストランやカフェだった。 正確には市民ではなく、軍人たちが盛り上がる。給仕をする軍人全員が、男はウェイトレス、女はウェイターの格好をするからだ。 「………あの、エドワードさん。これって…」 「うん、ウェイトレスの服。エプロンとか、この下着みたいなひらひらとか付けなきゃ、なんとか普通の服に見えるな、と持って」 「……これ着るんですか」 彼女の問いに、当然、というようにエドワードは頷いた。 「オレ、女物の服なんて持ってねぇし。職場の倉庫探しまくったんだけど、これしかなかったんだよな」 朝、いつもより30分早く彼女の家を訪ねたエドワードは、大きめの布製バックを手にしていた。その中身が紺色のワンピース 「悪ィ、背中のファスナー上げてくんねえ?」 「あ、はい」 靴までは気が回らなくていつものブーツだったが、混雑した車内で足元なんかどうせ見ないだろうと思い、可愛いギャザーが寄った膝上スカートから伸びる左足も、機械鎧のままだった。 「これでよし。女に見えるか?」 「見えます。…………足、綺麗ですね…」 「そうか?」 左足を持ち上げて眺めると、そっちも綺麗ですけど、右足のことです、と言われた。 そもそも彼女が初めて会ったときに『一瞬、女の方かと思ったので』と言ったことから思い付いたのだ。これなら彼女を守りながら、痴漢を誘き出せると思った。 「よし。行こうぜ」 いつものようにアルフォンスに結い上げてもらった髪を解いて、エドワードはにっこり笑った。
そそくさと家を出ようとしたエドワードを呼び止め、アルフォンスが訝しげに眉を寄せる。そろそろ不審に思われるだろうな、と予想していたので、あまりうろたえずに言いわけを口にできた。 「なんでもねぇよ、最近忙しいから朝早いってだけ。この中はタオルだよ。シャワー室のタオルよりも、やっぱり自分んちのタオルの方がいいからさ、持ち歩くことにしたんだ」 「…………。そう」 「んじゃ、いってきまーす」
最初こそ抵抗があったようだが、最近の彼女はずいぶんと打ち解けてくれて、昨日あった出来事とか友達の事とか、プライベートな話をよくするようになった。 「私のために、こんな……女性の格好までしてくれて」 違うって、とエドワードは笑う。 「最初に言っただろ。弟のためでもあるの」 こういう時は嘘でも君のためだよって言うんですよ、と彼女は軽く睨んだ。 「オレ、嘘つけねえから」 笑いながら、いつもの車両に入り、いつもの場所へと立つ。今日も車内は人で溢れていた。
もぞもぞと誰かに体をこすりつけられるような動きをされたのだ。混み合っているせいもあり、はじめは気のせいかと思っていたが、一旦離れた後、今度は明確な意図を持ってエドワードの腰付近に欲望を擦り付けてきた。 とうとう現れた。痴漢だ。 顔を見てやろうと体を捩ったが、うまくいかず、姿を確認することはできない。ということは、言い逃れが出来ないほど決定的に不埒な真似をしてきた男の手を掴むしかない。
無骨な手はエドワードの臀部を撫で回し、やがて前へと伸びてくる。腹部から上へと上ってきて胸を触るつもりらしい。 スカート越しに太腿を何度も撫でられ、エドワードは強い不快感で全身を強張らせた。 下肢を開かせようとして、自分の左足をエドワードの両足の間に割り入れてきたのだ。足を閉じれなくしてから、スカートの中に手を潜り込ませてきた。 手油で湿った生暖かい手がかなり気持ち悪くて、全身に震えが奔った。 男の手はゆっくりとエドワードの足を這い上り、下着の中へ侵入しようとした。 よし! とその手を掴もうとしたときだった。
「な…なんだ君は。変な言い掛かりは……」 30代後半と思しき身なりがきちんとした男の斜め後方に、金色の髪をした長身の姿があった。 「言い逃れしようとしても時間の無駄ですよ。現行犯ですからね。痴漢は親告罪ですが、そちらの そうですよね? と突然振り向かれ、エドワードは慌てて何度も頷いた。 「確かな証拠があるにもかかわらず犯行を否認したりすれば、勾留されます。逮捕は最大72時間ですが、勾留は通常10日間、最大は20日間だ。職を失うことになると思いますよ」 男が痛みで顔を歪めるくらい、エドワードに不埒な真似をした右手首を、アルフォンスはギリギリと締め付けた。
痴漢被害者としてエルリック少佐から事情を聞いている、と憲兵が軍に連絡してしまったので、今頃はエドワードがハボックとブレダに大笑いされているだろう。ひょっとして准将の耳にも入って高笑いされているかもしれない。ありえる、アイツなら。 犯人を捕まえることはエドワードの望みだったが、この展開はいただけなかった。 …………アルフォンスにバレた。 ただバレただけではなく、ワンピースを着て街中を歩いていたことがバレたのが痛い。 なにをやってるの、とお叱りを受けそうだ。
「その格好は?」 「えーと、痴漢を、ですね」 言い訳しようとしたら、傍らの彼女が私のせいなんです、と助け舟を出してくれた。 「私のことを守ってくれようとして……毎日、一緒に電車に乗ってくれて」 あ、いま余計なことを、とエドワードは彼女に口止めしなかったことを悔やむ。 「毎日? そう、毎日だったんだ」 「い、言っとくけど、こんな格好をし始めたのは、4日前からだぞ?」 「じゃあ今日で5回目なんだね」 「……う」 「どうして」 「痴漢が現れないからって、エドワードさんが囮になってくださったんです。 「……貴方にお尋ねしたいんですが」 アルフォンスの口調が妙に淡々としているのに気付き、ふとエドワードは変だなと思った。人当たりのいい弟は、特に力の弱い女性に対しては物腰が柔らかだ。こんなふうに無機質な声を出したりしない。 「え、ええ」 彼女は憲兵詰所で犯人を事情聴取していたとき、余罪を追及されて惚けた男に、私もこの男によく痴漢行為をされていました、と証言したのだ。 「僕への疑い、晴れました?」 はっとして、彼女は俯く。 「貴方、あの日僕が貴方に痴漢行為をしていないこと、ちゃんと分かってたんですよね?」 えっ、とエドワードが声を上げた。寝耳に水だ。 「ちょっ、ええ? なに、なんで……どういうことだよ」 「もう責める気持ちとかありませんよ。幸い、あのまま犯人にされることもありませんでしたし。今はもうこうやって本当の犯人も捕まったことだし」 一転、弟の声が優しさを帯びる。 まるでそれに促されるかのように、彼女は頭を深く下げた。 「ごっ、ごめんなさい!」
声を掛けたい、親しくなりたいと常々思っていたのだが、どうしていいのか分からず、思い悩んでいた時に、あの痴漢が現れたらしい。 「なんだ。そうだったのか……」 はぁ、とエドワードは脱力してしまう。こんな格好までしたのに。 「……ごめんなさい」 小さくなる彼女に、いいって、とエドワードは手を振ってみせた。 「で、きっかけ出来たけど、どうすんの?」 「あ………え、えーと……」 「兄さん」
「自分の非を告白するのには勇気がいるのに、認めてくれてありがとう」 「いえ、あの、私こそ。………こんな酷いことをしてしまって……。許してくださってありがとうございます」 エドワードさんも、と言って、丁寧に頭を下げてくれた。 「いろいろありがとうございました。………ごめんなさい」 「いや、ホントにいいって。無事解決したし。これで列車に乗るの、怖くなくなった?」 「あ…あの……! そのことなんですけど」 言い差した彼女の言葉を、アルフォンスが強引に止めた。 「じゃあ僕たちはこれで。せめて午後からは出勤しないといけないし」 何を思ったか一歩前に進み出て、アルフォンスは彼女の耳元で囁いた。
「……アル?」 弟は兄の肩を抱いたまま、どんどん歩いていく。 またしても弟を怒らせてしまったか、と兄は思った。 「どこいくんだ?」 「家」 なんで、と思い、自分がまだウェイトレス服のままだということに気付いた。そうか、着替えなきゃ。 「トイレで着替えるからいいって。わざわざ帰ることもないだろ?」 「駄目」 「なんで」 「あんな男に欲望擦り付けられたり、スカートの中に手を入れられたりして、気持ち悪くないの」 「そりゃあ………」 「午後からの出勤にはまだ時間に余裕があるんだから、せめてシャワーくらい浴びてよ」 言われてから、あの男の手の感触を思い出す。思わず歩みを緩めて鳥肌を立てて震えたら、アルフォンスは眉を寄せた。 「怖かったの?」 「いや、怖かったっていうんじゃなくて、確かにすげぇ気持ち悪かったな、って」 「………どこまで触られた?」 「え?」 「どこまで許したの?」 「………おまえ、許したとか言うなよ」 なんだか急に情けなくなる。 「……シリ撫でられた。あと太腿。そういや足開かされたな」 弟の顔がみるみる険しくなる。 「それで?」 「それでって……それだけ」 「本当?」 「…………」 「下着の中に手を入れられたりしなかった?」 エドワードは赤くなって、返事に窮してしまう。アルフォンスは眉間に深い皺を寄せた。 「どこまで入れさせたの」 「ちょ、ちょこっと指先が入ってきただけだよ。捕まえようとしたら、おまえが男の手を掴んで」 「触らせた?」 「まさか!」 触らせたら男だってバレんだろ、と更に赤くなる。 「この服はどこで着替えてたの? 駅のトイレ?」 アルフォンスは兄が着ているワンピースの襟をつんつんと引っ張った。 「彼女んちで…。だって背中のファスナー、オレ一人じゃ上げられねえもん」 「…………」 「なんだよ。言いたいことあるなら、はっきり言え」
「僕が毎朝、兄さんの髪を結うの、どうしてだと思う?」 「え、どうしてって 「僕が髪を弄ると、兄さんが気持ち良さそうにしてるからっていうのもあるけど、一番は不用意に髪を解いて欲しくないからだよ。兄さん、僕が髪を結んであげると、せっかくアルが結んでくれたからって、あんまり解かないよね?」 「あ、まあ……」 つまり何が言いたいかと言うと、とアルフォンスはエドワードの頬を両手で掴んで上向かせ、自分の顔を近づけた。
ここで素直にうんと言うべきか。それともなんでだよ、と聞くべきか。 眉を寄せてちょっと悩んでいると、アルフォンスは溜息をついて手を離した。 「さ、帰るよ」 また肩を抱き、どんどん歩き出す。 早足なのは、怒っているからなのだろうか? 「アル、あのよ」 ちょうど言い掛けたとき、躓いた。階段のところだったので滑り落ちそうになる。 「気をつけてよ兄さん。スカートなんだから。中を覗かれるの、嫌でしょ」 「………はひ…」 「ホント、よくそういう格好しようと思ったよね……」 「だってよ、しかたねえじゃん。彼女に囮になってもらうわけにはいかねーし。おまえの無実、絶対晴らしたかったし」 アルフォンスが目を見開く。彼女のためじゃなかったの? と。 「……おまえは怒ってるみてーだけどよ」 「怒ってるわけじゃないよ」 「怒ってる」 「怒ってないよ。………腹立たしいだけ」 「そういうのを、世間一般では怒ってるって言うんじゃねえのか?」 「違う、これは 言っていいのか一瞬迷った。安直に言葉にしていいものかどうか。
エドワードが弟の顔を仰ぎ見た。アルフォンスは傍らの兄の金色の目を見下ろし、その瞳の中に自分の姿が映っているのを見る。
「嫉妬したんだよ」 「………オレに?」 ふっ、とアルフォンスは柔らかな笑みを浮かべ、目を細めた。 「違うよ。無遠慮に兄さんに触ったあの男に。兄さんにこんなことまでさせたあの人に」 アルフォンスを好きだと言いながら、エドワードへ移った想いを伝えようとした彼女に。
「帰ろう」 今度は肩ではなく左手をつないで、アルフォンスはゆっくり歩いてゆく。 「あの……アルフォンス……」 「恥ずかしくないでしょ? 女装してるんだから。その辺によくいるカップルにしか見えないよ」 「アル」 「なに?」 「オレ、さっきも言ったじゃん。 「そうだったね」 「嫉妬するほどでもねえだろ?」 「それでも嫉妬してしまうんだよ、僕は」 「オレの一番はアルなのに?」 足を止めて振り返り、アルフォンスが目を大きく見開く。 「…………本気で言ってるの?」 「本気だよ。あたりまえだろ」 「………………」 「なんでそこで黙る」 「僕が『嫉妬してる』って言った意味、わかってる?」 「うん」 「………好きなんだよ、兄さんが」 「オレも好きだよ、アルが」 「僕が言ってる『好き』って意味、わかってる?」 「分かってるよ」 「本当に?」
鼻先が触れ合うほどの距離でも、エドワードは逃げず、まっすぐ無防備に弟を見ていた。
首筋から手を離して、再びエドワードの左手を取ると、歩き出す。
自分を見上げた兄に、アルフォンスは微笑んだ。
意味が伝わったのか、それとも分からなかったのか。エドワードは口を噤んで僅かに俯いた。 「人前で髪を解くな、人んちで服を脱ぐな、背中のファスナー上げてもらうなんてもってのほか、アルとウィンリィ以外の人間に体を触らせるな! ……か?」 「その通り」 「…………オレの一番は、ずっとアルだけだ」 「え? なに?」 「なんでもねえよ」
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ちょっと微妙な反応の兄さん。
そういえばアルフォンスくん、つい告白